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本人からのメッセージ
(注意)PWSのご本人は自己表現が苦手な方が多いようですが、もし思春期の彼らが自分のことを語るとしたら … 多くの方々からの情報をもとに書いてみました。(特定の方の話ではありません)
ご本人さんたちへ
「それは違うよ」ということや、「もっとこういうことを書いてほしい」ということがあったら、お知らせくださいね。
ぼくは食べることが何より好き。食べ物の話を聞くのも大好き。でも、友達と同じように食べても太ってしまう。それが悩みなんだ。 それに、近くに食べ物があると、いけないとわかっちゃいるんだけど、引き寄せられるように手が出てしまうことがある。その時は頭が真っ白になってるんだ。どうしてなのか自分でもわからない。でもあとで気がついて、「しまった」と青くなる。ぼくたちを食べ物の誘惑から守ってほしいよ。そこで怒られたりしたら、ますます頭が混乱してしまう。イライラしてきて、かえって食べ物のことばかり頭に浮かんでくるんだ。だから陰で思いっきり食べてしまう。これって「ストレス食い」なのかもしれないね。でもストレス食いする人ってけっこう多いよね。ぼくたちは、歯止めが皆より少し効かないだけなんだけどな。
ぼくはかゆいのががまんできない。それでかゆいところをかいてしまうんだ。暇なときとか、みんなの話がなんだかよくわからないときとか、疲れたときにはよけいにかゆくなる。そんなときに、かくなって言われたら、かき傷がもっと気になってかきむしっちゃうんだ。でも、「いいよいいよ」と軽く言って、薬を塗って傷テープを貼ってくれると、安心してかゆみもとれてくる。だからあんまりかかなくてすむようになるよ。もう大きいから、自分で薬を塗ることもあるけど、ときどきはお母さんに塗ってもらうとうれしいな。
ぼくは寂しがりやだ。いつも誰かそばで見守ってほしい。でないと見捨てられたような気持になって、不安がおそってくるんだ。そばにいても、ほかのことに気をとられていたら、見放されたみたいな気がする。寂しくなって、気がつくと、ほかの人のものに手を出していたりすることもある。それが見つかって、誰がやった!と怒られると、「誰も守っちゃくれない。守るのは自分しかない」と思うから、黙ってがんばり通すんだ。思わず作り話をしていることもある。話を作るのは僕らの得意技だからね、自然に出てしまうんだろうな。それなのに、嘘つきとか、なんで正直に言えないの、誰がやったか言いなさいなんて、しつこく責められたら、絶対に本当のことは言えなくなっちゃうよ。「わかってほしい」って目で訴えてるんだけど
… ぼくたちは、強いと思われているかもしれないけれど、ほんとは弱いんだよ。
悪いことをしたときに怒られるのはしかたがないけれど、「本当はいい子」と思ってほしいな。それもはっきり言葉で言ってもらわないと。叱られるだけじゃ、100%のダメ人間だって言われているような気がして、絶望的になってしまう。そうなると、やけっぱちになってしまうんだ。ぼくたちは、ひとの心はよく読めない。心のなかで思っているだけじゃ、ほとんど伝わらないんだよ。
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小学生のとき、ある日先生が、クラスのほかの子にずーっとかかわっていたから、ああもう、ぼくのことは忘れてしまったんだと寂しくなって、自分の靴を隠したりしたっけ。今はそんなことはしないけどね。
外で嫌なことがあっても、うちに帰ると、いつもほほえみかけてくれるひとがいるから、気持が楽になって、そういうことはしなくなったんだ。
ぼくたちは皆、気が優しくて、ひとの世話をするのがうれしいんだ。困っているひとを見ると、何とかしたいと思うし、皆が気持よく過ごしてほしいと思う。意地悪ばかりするプラダーの人もいるって聞いたけど、それはきっと、心が満たされなくて、安心させられてないからだと思うよ。
小さい子は大好き。遊んでやりたいな。小さい子もぼくのことが好きみたいでニコニコしながら寄ってくるんだ。子どもをあやしたり、世話したりするやりかたを教えてもらって、育児の手伝いをしている人もいるそうだけど、ぼくもできるかもしれないね。
動物もすごーく好きで、気持もよーくわかるんだ。動物たちもぼくの気持がわかるんだね、きっと。だって、ちょっと恐そうな動物だっておとなしくなるんだから。不思議な力があるみたいって言われてるけどね。
ぼくは人が好きだし、親友もほしい。だけど、一緒に遊んだ友達も離れていってしまったりする。なぜだろう。一人でいることが多いと寂しいな。小さな子どもの頃は、友達のものをこっそり持ち帰って、その子と一緒にいるような気になっていた。友達のものを隠して気を引こうとしたこともある。友だちから急に怒られてしまうこともあった。でも理解してくれる大人が仲に入ってくれると大丈夫。それに、ひとは皆それぞれ違う気持や考えがあることも、わかりやすく話してもらったり、本を読んで話しあったりしてもらうと、だんだんわかってくるよ。
ぼくはよくしゃべるけど、自分の気持を言うのは苦手なんだ。筋を通して、話を作るのはけっこう得意でも、理解して言っているとはかぎらない。現実と空想の境目がわからなくなることもある。だから誤解されて、嘘つきだと思われたりもするんだろうね。だけど、今しゃべっていることが、ほかの人にとっては空想でも、今のぼくたちにとっては「本当のこと」なんだから、それは嘘だなんて言わないで、話を聞いてほしい。事実かどうか裁判官のように判断するんじゃなくて、まずはぼくらの心が何を言いたいのかわかってほしいんだ。
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ぼくには「時の流れ」っていうのがよくわからない。時刻はわかるけど時間がわからないんだ。デジタル時計みたいだと言われたこともある。時間って何だろう。目で見えないものって信用できないから、見えないようなものは不安になるんだね。1月20日に行くよとか、今度土曜に○○するよ、と言われても、それってどのくらい後かよくわからないから、不安になって、「まだなの?」とか何回もきくんだ。
何か特別の理由がなくても、すごく不安になったり、同じことが頭のなかでグルグル回って繰り返しの話になったり、考えが食べ物や何かに張りついたようになってしまうことがある。そういうときは、かかりつけの先生に相談して、少し薬を出してもらうといいよ。それで気分が良くなれば、ほかのこともうまくいくからね。
ぼくは真面目でがんばりやだ。いつもがんばって偉いと、よくほめられる。これだけできるのだから、もっとがんばれるねと励まされたりもする。それでぼくは、もっともっとがんばろう!と思う。でもそれって100%以上の力を出し続けることだから、とっても疲れて、途中で寝てしまったりするんだ。ぼくたちはすごくがんばるタイプなんだけど、スタミナはあんまりないんだよ。疲れて眠くなっているのに、昼間から寝ちゃだめって厳しく言われて、陰でこっそり寝ている人もいるよ。お風呂なんかこっそり寝るのに最高だけど、危ないから気をつけてね。
でもぼくは、うちに帰ると、「いいよいいよ、もう十分がんばったのだから、リラックスしてやろうね」と言われるから、ほっとするんだ。
がんばれ!って言われてやるのだったら、運動だって面白くないだろうな。学校を卒業したら運動なんかしないぞって言う子もけっこういるからね。ぼくのうちでは皆でスポーツを楽しんでる。いままでできなかったことでも、楽しんでやれば知らないうちに上達するし、もっとやりたくなってくるよ。
ぼくは完全でないとイヤという性格なんだ。几帳面だねとほめられるけど、気楽にできない性格ってけっこうつらい。食事のお皿も、完全にきれいになってしまわないと落ち着かないんだ。食欲だけの問題じゃないんだよ。
完全でないとイヤだから、あいまいなことがあると落ち着かなくなる。ぼくが経験したことからつなげて教えてくれれば理解できるんだけどな。ものごとが白か黒に決められないことが多いことも、いろいろな場合があることも、教えてもらわないとわからないよ。
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でも、白か黒かはっきりしないと許せない人ってけっこういるよね。そういう人だったら、ぼくたちのことをわかってくれそうだけど。いつも白か黒かはっきりさせようとすると疲れてしまうけど、「まあいいか」とか「いいよいいよ」って言葉を教わって使ってみたら、気が楽になって、細かいことにこだわらなくなってきたよ。これって魔法の言葉かもしれないね。
ぼくは丸暗記が得意。試験も丸暗記するとけっこういい点が取れる。でも、何が書かれているのかと聞かれると困ってしまうな。意味はあまりわからないんだ。ゆっくり時間をかけて、ぼくに合うように教えてもらえば、わかるようになるんだけど…。苦手なことは時間がかかるんだよ。それに、昔のことはよーく覚えているけど、ちょっと前のことは忘れちゃうんだ。そこはモヤモヤっとしてしまって、よくわからなくなる。だから、こんなことがわかるのに、どうしてこんなこともわからないの、なんて言わないでほしい。
でもときどきヘンなことがおこる。ぼくが聞いた話と、ほかの人たちが聞いた話が違っているんだ。そんなことは絶対言われなかったと思うのに、皆から「言ったよ」と言われると、そんなはずはないと思うから、イヤーな感じがしてくる。ぼくの知らないことが話されたなんて、おかしいし、くやしい。そのうえに、これが証拠だよなんて見せつけられたら、もう、怒りがこみあげてくる。
でもなかには、ぼくの発想は面白いねと言ってくれる人もいる。お母さんもそうだし、担任の先生も楽しんでくれている。ちょっとずれたことを言ったりやったりするそうだけど、「ユニークで面白い」と思ってくれると気が楽になるよね。
ぼくは繊細な神経の持ち主なんだ。いろんなことが見えてしまって、まわりが気になって、どうしようもなくなることもある。気になることがありすぎると混乱して、パニックが出ることもある。こんなに細かく目配り、気配りしてしまうから、気疲れするのもしかたがないね。
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ぼくは競争があると燃える。ひとに負けたくない。だからがんばるんだ。そのときは、ほかのことは何も見えなくなるし、あとで疲れてしまう。それに、いつも勝てるわけじゃない。パニックをおこす子もいるよ。勝ちたい気持が強すぎるんだろうね。そういうとき、パニックをおさえてもしょうがないよね。ふだんから、「勝ち負けより、そのときせいいっぱいやることが大事だよ」「そのとき、こんな楽しみ方もあるよ」ということを、わかりやすく教えてくれたほうが、勝ち負けにはこだわらないで、いろいろ楽しめるようになってくると思うけどな。
お父さんも、ぼくがわかるようにきちんと説明して、ルールもよく教えてくれるので、ぼくもルールというのがだんだんわかってきて、遊びもゲームも面白くなってきたよ。ぼくのお父さんは、ぐちゃぐちゃ言わないで、これがルールだよって言ってくれるからいい。ルールって、わかったらきっと好きになるよ。
ぼくは急な変化も苦手なんだ。いったん決まったことを急に変えられると、頭が混乱してイライラしてくる。変化に合わせるには、かなりの時間がかかるんだよ。予定を変える時は前もって教えてもらいたいな。ぼくたちがいらついているときは、理由があることをわかってほしい。たとえば、前に言われたことと違っているとか。ぼくたちは記憶力がいいから、ちゃんと覚えているんだよ。
予定を立てたり、決めごとをするときは、一緒にやってほしいな。こう決めたから守りなさいとか、言うことを聞きなさいって言われても、ひと事みたいでピンと来ない。気がつくと、自分の得意なほかのことをやっていて、怒られたりする。でも一緒に考えて、納得がいけば守れるんだ。ぼくたちは、問題にぶつかった時、どうしていいかわからない。だからいつも不安なんだよ。どうしたらいいかを一緒に考えてもらえば安心するので、パニックをおこさなくてすむと思うよ。
ぼくたちは、ふつうより時間をかけて大人になっていくんだよ。だから、ゆっくりでもかならず成長すると信じてほしいんだ。早く独りでやりなさいと言われると、自信がなければ突き放されたようで、すごく不安になる。でもお母さんは何をするときでも一緒にやってくれるんだ。だからとても安心。ぼくだけでなくて、きょうだいにも、一緒にやってくれているから、きょうだいも妬いたりしないよ。
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ぼくにも家族にも、支えてくれる人がいっぱいいる。お母さんは、ぼくのことをよくわかろうとしてくれるし、ほかの人たちにもわかってもらえるように説明してくれている。同じプラダー・ウィリーの子のお母さんたちと話しているのに聞き耳を立てたけど、ぼくの悪いところは言わなかった。ただ、「こういうことが苦手で困ってるみたいだけど、どうしたらいいかしら」って訊いていたっけ。かかりつけの先生も話をよく聞いてくれて、ぼくのことをよくわかって相談にのってくれる。担任の先生も、ぼくは悪い子じゃなくて、うまくやろうと思ってもできないだけだということをよくわかってくれるから、安心して何でも話せる。お母さんは、お父さんにぼくのことをしっかり話してくれたから、お父さんもぼくの話を聞かないで怒るようなことはしない。おじいちゃん、おばあちゃんもよくわかってくれて、ごほうびにはお菓子でなくて本をくれる。だからぼくも家族もみんな幸せなんだ。
ぼくの家族はいろんな人が支えてくれているけど、一人でがんばって疲れて果てているお母さんもけっこういるみたい。それじゃ誰だってキレちゃって、子どもを怒鳴りたくもなるよね。「もうこの年になったら何をしてもだめよ」とあきらめを言う人もいるけど、でも、時代は変わってるんだ。プラダー・ウィリー症候群だからあきらめるなんてもう昔話だよ。
― PWSA USAによる理解啓発のための教育用ラップソングより ―
“ I’ve got Prader-Willi, but my name’s not Willy ! ”
「私はプラダー・ウィリーだけれど、私の名前はウィリーじゃないよ!」
(障害を持っているというだけで、私自身が障害ではない)
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